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  • 執筆者の写真八戸工場大学

2019年度 第2回講義 後半「企業とアート「印刷技術を活かしたメセナとは」

更新日:2020年9月3日

9月18日(水)2人目の講師は、帆風美術館の吉田章恵さんです。

帆風美術館は、東京に本社を置く印刷会社(株)帆風が長年培ったカラーマネジメント技術と最新機器による複製画技法「デジタル光筆画」で、国宝や重要文化財等の日本画の名品を作成、展示している複製画専門の美術館です。




「メセナ」とは芸術文化支援を意味するフランス語ですが、日本では「日仏文化サミット88~文化と企業」を契機に企業メセナ協議会が1990年に発足した際、「即効的な販売促進、広告宣伝効果を求めるのではなく、社会貢献の一貫として行う芸術文化支援という意味で「メセナ」という言葉を導入したのをきっかけに、企業が資金を提供して文化活動・技術活動を支援することとして、一般的に知られるようになりました。

帆風の一般印刷は、現在は、全て東京本社にある工場で行っており、印刷から配達まで全てを一本化しているところが特徴的です。 帆風美術館は、その帆風の創業者であり取締役会長の犬養俊輔氏の「企業の最終目標は社会貢献である」という理念に基づき、帆風のアートディレクターだった故・小原紹一郎氏を館長とし、江戸期の日本美術を高品質複製画で再現した作品を、鑑賞機会の少ない地方、八戸市に届けようと2008年に設立されました。

印刷について印象的だったのは、日本画における墨の再現性についてです。通常、家庭用プリンターは6色のカートリッジを使用しますが、帆風では12色、そのうち、4色が墨の再現に使用されます。本物により近い再現性のある印刷技術により、持ち運びや保存、展示が困難な国宝級の日本画を、ここ八戸市で鑑賞することができる、また明るい照明の下での鑑賞、実際に手にとっての鑑賞と複製画だからこそできる様々な楽しみ方がこの美術館にはあります。


作品は他の美術館から借りて印刷。この10年で全国145カ所から協力いただき、たくさんの日本画を八戸市の方々に届けることができました。作品は展示用と協力元用に計2点のみ作成し、協力元には作成データを送っており大変重宝していただいています。

帆風は、実は八戸市ハイテクパークの入居第1号。ここは電線を地下に埋め、まわりの樹木をそのまま残しており、たくさんの自然を感じられる場所にあります。木々の香り、四季折々の移り変わり、美しさも楽しむことができますと吉田さんはお話してくださいました。 また、帆風美術館に一番最初に展示した作品が、川端康成氏の所蔵する国宝3点の複製画だったことも教えていただきました。川端康成氏の奥様が八戸市出身だったそうなのです。八戸市に縁があったんですね。


犬養俊輔氏が企業の社会貢献の一環としてアートを取り入れたこと、その場所に八戸市を選んだこと、最初の展示作品の所有者の妻が八戸市出身だったこと…。その繋がり、その歴史を知ることで、私たちの帆風美術館への想いはより深いものとなりました。 講義の後、日本画の複製画を間近に見せていただき、受講生の皆さんも盛り上がっていましたよ。



八戸工場大学課外活動で、10月6日に帆風美術館と工場景観ツアーと題して、受講生の皆さんと帆風美術館見学に行ってきます。 吉田さんのお話してくださった印刷技術を感じながら作品の鑑賞を楽しみ、八戸市景観賞を受賞したこともある美術館の建物をゆっくり堪能してきたいと思います! (その後の懇親会も楽しみですね)

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